サックス教室

サックスプレーヤーであり、フルート奏者でもある(KOSE)こと菊地康正の公式ホームページにようこそ。音楽を楽しみたい方のためにサックス道場、フルート道場も主催しています。




新韓国道中記 2003



2003年6月、キム・ビヨン・スー氏のたっての要望で、2度目の韓国レッスン&ライブ

ツァーに行って参りました。久々の韓国は、やはりレッスンとライブで目一杯のスケジュ

ールでした。次回はできたら少し時間をとって観光したいものです。でもまあ今回急に

行くことになったのは、きっかけといえばやはり、ネパールからの通信講座の問い合わ

せの0さんでした。日本人でネパール在住の0さんはご夫婦で医師として活躍され、

カナダ→アメリカ→ネパールと世界を股に掛けて活躍されています。サックスの通信

講座を受講したいのだけれど、友人の韓国人にもそのノウハウを教えてあげたい。

だけど私は韓国語ができないので、菊地先生のメソッドを韓国語で説明してくれる

先生はいませんか?との問い合わせがあり、私の友人でもあるキム・ビヨン・スー氏を

紹介したわけです。
 
氏とその件で国際電話のやりとりをしているうちに、そうだ菊地先生、久々に韓国に

来て教えてくれませんかという話なり、予定を確認すると翌週がたまたま何とかなり

そうだったので引き受けて早速の出発となったわけです。




氏の主催す BSK 音楽院は、ソウルの隣町インチョン市で、地域密着型の音楽学校と

してサックス、フルートの大勢の生徒をたくさん抱えています。面白いのは、その教え

方は私の著書「 Play the Alto sax、Play the jazz sax」 などに基づき、ファットリップ、

移動ド読みなど、すべてではありませんが、その基本的な部分を私の教室と同じよう

に教えていることです。いわば私の教室と BSK 音楽院は姉妹校の関係にあると言え

ると思います。



金氏は私のレッスンも何回も受けており基本的なことはしっかり理解したうえで生徒

に教えてくれているので、今回もいろいろな生徒を見て、日本で教えているのとほぼ変

わらない感覚で教えることができました。






成田で飛行機を待つ。



チャン・ドン・ジン先生と。


キム・ビヨン・スー氏と笛のデュエット。


子供たちにフルートを教えるキム・ビヨン・

スー夫人ヨン・ノックさんはこの日以来ジャズ

フルートにはまっているとか?


フルートのアンブシュアについては、「やはりジャズフルートというのは、そういう顔の形

で吹くんですか?」という質問を受けましたが…(その真意は、フルートを吹くときの私

の顔の形が、馬またはゴリラに似ている?かな?ははは…)また今回の目的は、教育

活動のほかにこれから韓国で演奏活動するにあたっての足掛かりとなる関係者との

面会、さらにそのプロジェクトを日本で実行するにあたっての打ち合わせなどもあった

わけですが、そちらも十分な話し合いが行われました。すぐにというわけではありませ

んが、楽しみにしていただきたいと思います。




 さて、韓国では教室で生徒を見るほかに、最近できた素晴らしいジャズクラブで一晩

演奏することになっていたのですが、出発前日になって、連絡があり都合が変わって1

日前に演奏することになったので、メンバーが確定できないという連絡が入りました。

国の祝日の当たっているとのことで、集客の問題等で急遽延期になったようです。

当てにしていたバークリー出身のピアニストのチームがその日は出演できないという

ことなのです。彼とやりとりをしているうちに、そうだ僕のいつもやっているピアニストが

エレクトーン出身なので、足が使えるので、ひとりでピアニストとベーシストの役割が

できる旨を伝えると、それはいい、連れてきてください…ということで、ピアニストの

藤井ユカ女史
に問い合わせると、たまたま予定が空いているので二つ返事で OK。

すぐ航空券を手配して早速の出発となりました。もう2時間遅かったら航空券は取れ

なかった可能性があります。(汗・・・)




 こういう不測の事態というのは逆にワクワクドキドキハラハラがあって面白いもの

です。出発当日は、前日までに片づけなければいけなかった事務的な仕事がなか

なか片づけなくて、寝たのは朝の6時半、8時半には起床して横浜経由で成田空港へ。





 5年ぶりの韓国は、今回は金浦空港ではなくインチョン空港に降り立ちました。とても

近代的な設備の素晴らしい空港でした。都心にも近く、アジアの中心的なハブ空港に

なる空港と聞いています。氏とも、数年ぶりの再開を喜び合いました。また、その後

共演をすることになる韓国ナショナルシンフォニーオケのチャン・ドン・ジン先生、また

私の著書の韓国語版の翻訳を担当してくださるという韓国人フルーティストの方ともお

目にかかりました。





 その日は演奏活動の関係者との打ち合わせの後学院に戻ると、せっかくエレクトー

ン奏者を連れてきたのに、ヤマハのシンセサイザーしかないことが判明。さっきも言い

ましたが、こういう普段の環境ではないところに来て、あるべきものがなかったり、

(特に楽器がないという場合が多いのですが)逆にいったいこの先どうなるだろうと

ワクワクするのが僕は大好きなのです。さすが金氏は早速手配してエレクトーンを

借りてきました。試しに音を出してみると、多少旧型ながらしっかりと音が出るではあ

りませんか!ところが足の鍵盤の最低音の C のキーが折れているらしいことが判明。

それも本職がピアノの調律師だというサックスの生徒ウー・クンチョン君の活躍でしっか

り直りました。到着した日は、集まった生徒の皆さんにご挨拶演奏して1日が終わりま

した。








二十歳のテナー研究青年キム・ハル
君はカイルベルスのテナー。



レッスンの合間の楽しい焼き肉パーティ。


私のフルートレッスンの通訳の合間に
くつろぐキム・ビヨン・スー夫妻。



サックスレッスン。



ジャズクラブ・ブルーボッサでのキム・
ビヨン・スーの関係者、バンドメンバー。

第2日目は、続々とやってくる生徒たちにどんどんレッスンをこなしていきましたが、

通訳の金氏も大変だったと思います。本当にお疲れ様でした。でも私のメソッド通り、

呼吸法、ファットリップときちんと教えてくれていたので大変助かりました。韓国の放送

局のオーケストラで活躍するドラマーのキムムゲ氏と、フュージョン、ロック系のギタリス

ト、チャー・ヤソン氏が到着して、その日の夜のためのリハーサルが開始となりました。

曲は、チュニジアの夜、春のサンバ、他スタンダード数曲、演奏のレベルとしてはようや

く何とかなりそうな所でしたが、本番は藤井ユカ女史の素晴らしい左足(足ベース)の

活躍もあり(もちろん両手の働きも大活躍でした)お客さんも、氏の友人、生徒関係が

中心でしたがたくさん来て下さって盛り上がったいい演奏ができたと思っています。

いちばん感激したのは、その「ブルー・ボッサ」という素晴らしいジャズクラブと、氏の

友人たちの素晴らしい人が多いことでした。会社社長などの実業家のほかに、陶芸家

でサックスもたしなむチイー教授からは、展覧会に入賞した作品の隷書体で書かれた

李白の漢詩の素晴らしい掛け軸をいただきました。「ブルー・ボッサ」の内装は床が

大理石のような石張りで、話を聞くと本業は建築設計の方だと言いますから、まるで

吉祥寺のアートストリングの以前のオーナーのようではありませんか。








エレクトーンのお姉さんは
野田ユカ




ソウルフルなギター
を聞かせて
くれたチャー・ヤソン氏


ジャズクラブ・ブルーボッサにて。
 
さて訪韓3日目は、レッスン漬けの1日でした。金さんの奥様で、子供達にフルートを教

えるのが仕事の、ヨン・ノックさんは、30代の美しい韓国婦人です。日本語はほとんど

わかりませんが、いつも優しくコーヒーを入れてくださるその姿に、昔の日本女性のよ

うな奥ゆかしさを感じました。また在韓中は、毎朝奥様のおいしい韓国家庭料理でも

てなしていただきました。そのヨン・ノックさんのフルートレッスンでは、韓国で発売され

ているフルートの2重奏の楽譜をを使用しましたが、日本ではまったく知られていない

韓国のポピュラーソングも何曲が演奏してみました。なかなか素敵な小品が発見でき

ましたが、聞いてみるとコンピュータゲームのパックに使われている楽曲で当地では

非常に有名な曲だとか…そのほかに、女性のフルートの生徒では、ソン・キョンヒさん

や、サックスの生徒チョー・ソンホ君、ナム・スンシック君、音大生でチャーリーパーカー

のソロを研究しているキム・インナムさん、テナーのイー・ミョンスー君、二十歳の

テナー研究青年キム・ハル君は私と同じブラックニッケルのカエルベルスのテナーを

使用していました。ほかにもたくさんの生徒さんのレッスンをしました。

 夜になって、最後の夜だということでキム先生のはからいで、多くの生徒を集めて

公開レッスンおよびミニライブが開催されました。参加者数はおよそ30名、聴講生

の中には多くの若者の間に混じってキム・キョンゴンさんなどベテランのサックス奏者

やギター奏者などプロの演奏家の顔もちらほら見られました。ある程度の経験者の

女性サックス生徒をモデルに、呼吸法、ファットリップ奏法などをこと細かに解説して

いきます。その後は当日の参加者ほとんど全員が楽器を取り出して、Fly me to the

moon のテーマとアドリブに挑戦。中にはなかなかのフィーリングを醸し出す人や、

まだ音はでたらめだけど、フレーズがどんどん湧いてくるタイプの人もいましたので、

これからが本当に楽しみかと思います。最後の質疑応答では、楽曲のコード進行

どおりにアドリブをするにはどういう練習が必要なのか?という突っ込んだ質問も出

ました。これは5分や10分では答えられないので、5度のサイクルや循環コード進行

など典型的なものを少しだけ紹介するに止めました。私の中級テキストが早く世に

公開され、それが英語版に翻訳される前に韓国語版が発売されそうなのですが、

そうしたらこういう質問がさらに増えるでしょう。(汗)私も少しばかりは韓国語を勉強

しなくては…





 
さて第3部は、ミニライブとなりましたが、素敵なゲストが登場しました。韓国で活躍

するロシア人クラリネット奏者アントン氏とピアニストのビクトール氏です。アントン氏

は見たところ30代、ビクトール氏は50代後半か?実はさっきの公開レッスンで、タン

ギング、スタッカートで舌をリードのどのポイントに触るかというレッスンをしているとき

に、客席にいたアントン氏に、質問を振ってみたところ、タンギングについてはそれは

それは long story だというので、私は簡潔な即答を求めていたのでその長いお話を

聞くのはやめていました。放っておいたら彼はタンギングに関してだけでも2、3時間は

語っていたことでしょう(笑い)。





さてミニライブでの彼らの演奏曲は、ベニーグッドマンで有名な sing sing sing でした。

あの難しいクラリネットという楽器で流れるような素晴らしいアドリブ、ピアニスト氏もも

のすごいテクニックでした。ロシア人とキューバ人は馬鹿テクと聞いていましたが、

すごかった。ものすごいテクニックなのだけど、リズム感がとても安定しているので、

安心して聴ける素晴らしい演奏でした。クラリネットときたら、これはフルートで共演

しなくてはと、その二人に次の曲では、私はフルートで乱入、曲は枯葉を選びました。

これがまた、クラリネットとフルートで音色がブレンドしてなかなか楽しい演奏だったの

です。







キム・ビヨン・スー校長のご挨拶。
お話しの中には、北と南に別れ別れに
なった同胞の話も。

アルトではサテンドールを演奏。

テナーでダニーボーイを演奏。
 
最後にはまた再び藤井ユカ女史にエレクトーンで登場願い、テナーサックスで、All

the things you are,ダニーボーイ、アルトサックスでサテンドールを演奏しました。さす

が足の名手ユカピーのオルガンサウンドはは素晴らしい。もちろんピアニストとしても、

小粒ながらピリリと来るのですが、本領発揮というところでしょうか。ドラムを加えて

トリオにしてももいい。。あとで聞いた話ですが私の ダニーボーイ演奏聞きながら、

ロシア人の二人他何人かが泣いていたそうです

。自分の演奏で泣いてもらえるなんて音楽家冥利に尽きる話です。心をこめて演奏

して良かったなぁと思いました。





 最後にまたひとつ嬉しいことがありました。5年前に、訪韓したときに空港で私を

花束で出迎えてくれた可愛い小学生フルート吹き少女だったパク・ソンジュちゃんは、

小学低学年ながら良くフルートを吹いていました。(私の韓国道中記1−冒頭で花束を

持った小学生の女の子の写真が彼女です)今回私が来ると聞き是非会いたいとお

母さんといっしょに会いに来てくれましたが、すっかり大きくなって中学生の美しい

少女になっていました。パーティーが終わって後片付けのときでしたが、せっかく

フルートを持っているのだからぜひ音を聞かしてほしいと私がせがむと、クラシック

の小品「愛のあいさつ」を吹いてくれて、私はすっかり嬉しい気持ちになっていたの

でした。お返しにグリーンスリーブスを私が吹き始めると、どこからともなくハーモニー

を吹くフルートの音が聞こえて、振り向くと藤井ユカ女史が今度はフルートに持ち

換えて吹いていたのでした。瞬間的にメロディーをそのキーで吹くだけでもすごいこと

なのですが、さらにハーモニーをつけて吹ける人は初めて見ました。





 
こうして韓国でのイベントはすべて終了し、キムさん夫妻とおいしい韓国料理をい

ただきながら打ち上げとなったわけですが、今後は、お互いに交換留学生を出す話

や、合同での合宿、発表会など実現したら素晴らしいアイディアがどんどん出ました。

日本と韓国で共同作業を進めてスクラムを組んで中国へ進出しよう…というアイディア

もあながち荒唐無稽なことではないかもしれません。ユニクロや多くの日本のメーカー

企業の例を出すまでもなく、最近はみなやっていることです。ヤマハなども韓国や

ベトナムなどに音楽教育と楽器の販売でずいぶん力を入れているようです。とりあ

えずは現在発売されている私の教本の韓国語版の発売と、韓国での演奏活動を少し

ずつ進めていきたいと考えています。今回改めて感じたのは、言い古された言葉か

もしれませんが音楽にやはり国境はないということでした。最後まで読んでいただき

有り難うございました。