サックスプレーヤーフルート奏者菊地康正

サックスプレーヤーであり、フルート奏者でもある(KOSE)こと菊地康正の公式ホームページにようこそ。音楽を楽しみたい方のためにサックス道場、フルート道場も主催しています。

菊地康正のサックス入門  vol.4

聖者が町にやってくる
聖者が町にやってくる、解説
Fly me to the moon
Fly me to the moon、解説
菊地康正のサックス入門  vol.5



 今日は菊地です。 サックス超入門のこの講座も第4回目となりました。この記事でも勉強できることはもちろん、インターネットで音も聴け、楽譜もダウンロードできるので、練習している人も多いようですね?(3以外は工事中です。しばらくお待ち下さい)今回は前回の約束通り、アドリブ(即興演奏)に挑戦してみましょう。

 この記事を書いている現在2002/6月下旬は、もうすぐワールドカップの決勝というところです。4年前のフランスでは、日本チームは残念な結果に終わりましたが、今回はすばらしい健闘を見せてくれました。日本人だってやればできるじゃないか…と勇気付けられた人も私だけではないと思います。私も、拳を握ってテレビで応援しましたが、相手の出方を読み、パスワークでフェイントをかけ、少し先を考えて予想しながらプレイしていくところは、ジャズの即興演奏にそっくりです。

また今回びっくりさせられたのは、共同開催国である韓国チームの素晴らしさでした。テレビで見る限り、日本チームよりいろいろな面で上を行っているのではないかと感じました。アジア人だって、世界の舞台でやればできるではないか…と思わされました。音楽の世界では、クラシックはヨーロッパの人に、ジャズはアメリカの人にかなわないと思っている人も多いと思いますが、これからは外国から基本を学んだ後に、本場の人たちが真似をしたくなるようなオリジナリティを持った音楽を日本から発信していきたいものです。

 特に、現在の世界でポピュラリティを得ている音楽、ロック、ポップスはその起源をアフリカに持つリズムでできていると言われています。ジャズもかつてはその時代のポップだったわけですが、メロディーやハーモニーの面でクラシック音楽から多大なものを借りてきて、芸術として認められるようになりました。ですがその基本は、定期的に体を動かして気持ちがいい…という踊りと表裏一体のものだと思います。

この夏、ブロードウェーミュージカルの「swing」がやってきますが、主立った筋書きもなく、最初から最後までご機嫌なスィングジャズに乗せて、ダンサーが踊りまくるという内容だと聞いています。あまりにも過激な踊りに、ダンサーの負傷者が続出している、しかしあの厳しいブロードウェーで1年半のロングランを続けているすばらしいミュージカルなので、私もぜひ体験しに行こうと思っています。ジャズのリズムが、踊りと表裏一体だということをもう一度体験できるのではないかと大いに期待しています。

アドリブに挑戦

 さて今回は、即興演奏に挑戦ということですが、ある程度の基本的な演奏力はあるという前提で話を進めていきます。ある程度の基本的な演奏力とは、正しい呼吸法、正しいアンブシュア、正しいタンギングで、簡単なキーの音階、分散和音が吹ける…というレベルを想定しています。

前回までに、呼吸法、ファットリップ奏法、そしてアーティキュレイションの付け方については研究していますので、詳しくはバックナンバー、もしくは同じ内容を私のWebで勉強してください。先月の Watermelon man そして Autumn leaves はいかがでしたか?体全体でリズムを取りながら楽しく演奏できたと思います。今月は、聖者が町にやってくる( When the saints go marchin' in)、そしてフライミー・トゥー・ザ・ムーン(Fly me to the moon)を素材に使って、分散和音によるアプローチを研究してみましょう。

 私の教室では、即興演奏に便利な「移動ド読み」を推奨していますが、現在の日本の音楽教育の現状としては、文部省の指導要領を作っている音楽大学の関係の偉い先生たちの間で「固定ド読み」の方が30年前に優勢になっていた関係で、以前は小中学で教えられていた移動ド読みがうち捨てられて、現在45歳より若い人はそういう教育を受けた事がないようです。そこで、私が一念発起して10ヶ月をかけて製作2010年末に発売したのが、音感トレーニングメソッドです。詳しくは下記ををご覧下さい。

音感トレーニングメソッド案内ページ


ジャズの即興演奏は、例えば、2/5/1などのフレーズパターンを、7キーで、また12キーでと言う風に練習してその組み合わせでメロディを紡いでいきますので移動読みでそのフレーズを覚えていけばとても便利なのです。
また合唱などで移動ド読みがわかっていると、相対的に音程を取れるので美しくハーモニーさせることができてとても便利なのです。また移動ド読みは、基本的なトニック、トミナント、サブトミナント…などの機能和声のダイナミズムを理解するのに最適な方法です。

間違った固定ド読みの病状が悪化すると、サクソホンなどの移調楽器そのものが体が受け付けないという現象が起こる場合があります。弦楽器やピアノ、フルート、オーボエなどのCの楽器しか演奏できないということでは困ったものです。

 誤解のないように付け加えておくと、移動ド読みにも欠点があり、それは転調に弱いということです。頻繁に転調するような音楽や、調性のない音楽の場合は俄然固定ド読みが有利になってきます。また器楽の場合、我々でも所見読みの場合は固定ド読みを使用します。(調性がわかった時点ですぐ移動に切り替わりますが…)ですからある程度は両方必要だということになります。とりあえず今月は、すべてキーはCなので、移動でも固定でも問題なくできると思います。C=ドということで話を進めていきます。


聖者が町にやってくる( When the saints go marchin' in)





 楽譜1をみてください。この楽譜は、アルトでもテナーでもクラリネットでも、フルートでもOKです。楽譜の上に書いてある、C、F、G7 などはコードネームと言います。この記号で和音のすべての音を指定します。例えばCと書いてあったら、読み方はCメージャー、音はドミソです。この楽譜の最後「chord」にその構成音を立て積みに書いてあります。また誤解の無いようにいっておくと、ドミソだったらどの音域の音を演奏してもいいし、どういう順番で演奏してもかまいません(重要)。コードネームについて詳しくはいろいろ市販本も出ていますので各自研究してください。この曲に使われる七つのコードの構成音をすべてドレミで書き出してみましょう。



C(Cメージャー)・・・ドミソ

F(Fメージャー)・・・ファラド

Am7(Aマイナーセブン)・ラドミソ

G7(Gセブン)・・・・ソシレファ

D7(Dセブン)・・・・レファ#ラド
(ファ#はファを半音上げた音)

C7(Cセブン)・・・・ドミソシ♭(シ♭は
シを半音下げた音)

Fmin(Fマイナー)・・・ファラ♭ド



注意点…F/G という表記がありますが、これは、ペース音が G、コードはF ということです。メロディーを演奏する人にとってはペース音は無視して上部構造のみを考えることとします。なお、Aマイナーセブンを、アーマイナーセブンと発音しないように注意しましょう。アーはドイツ語で、それを言うならアーモールとなります。またドイツ語では、Eのことをエーと発音するので、紛らわしい。英語で統一してください。

 まずこれらのコードを、ピアノ(キーボード、ギターなども可)を弾いて、1個1個の音を歌って音の高さを記憶するようにしてください。またその響きを味わうようにしてください。

具体的には例えば F と Fmin を弾いて比べると

F は明るく、Fmin は暗い感じがする。

C は明るく安定した感じがするが、C7 は不安定というか次のコードに期待を持たせる感じがする…

などの違いを感じるようにしてほしいものです。キーボードを弾いて、すぐその音を声を出して歌ってみる。即興演奏とは、楽器で自分で音を組み立てる作業なので、音の高さを正確に歌えない、音の高さを記憶できない…という症状の方は、声楽の教科書コールユーブンゲンなどを使って、ソルヘージュのレッスンをすることをおすすめします。

 ではこの曲を練習してみましょう。練習する手順は、

@ドレミで音程をつけてこの曲をまず歌ってみます。

Aよどみなく歌えたら、今度は楽器をもって指をつけながら歌ってみます。ドレミと指が合っている
かどうかようく確認してください。

Bドレミと指がぴったり一致したら、楽器を吹き始めます。

C最初はアーティキュレイションは気にしなくていいですが、その通りの音をきちんとふけるようになったら、スタッカート、テヌートなどのアーティキュレイションを正確につけるように練習しましょう。

 テーマが吹けるようになったら、var1と2を注意深く練習してみましょう。テクニック的にはそんなに難しいわけではありません。それよりも楽譜の最後「chord」の部分を参照して、コードの構成音がどのようにメロディーに使われているか研究してみてください。いろいろな発見があるはずです。

 ここから先は、音楽理論、作曲の勉強になってきます。音の高さを感覚的にとらえる能力…音感…は前提条件として絶対に必要ですが、それを理数的に考え、素早く計算し、なおかつ美しくバランスの取れた音の並び方を考えるために、デザイナー的センスも必要になってきます。

  ジャズの歴史上に残っている即興演奏の名人たちは、スポーツの世界に例えば全員オリンピックの金メダリストのようなものです。書かれた音楽を芸術的に演奏できるクラシックの演奏家もすばらしいですが、即興演奏の大家の方は、とても人間業とは思えないサーカスの曲芸師のようなものです。

 そのレベルは、誰でも努力すれば到達できるというものではありません。しかし、簡単なコード分散による即興演奏ならば、訓練を積めば誰でもある程度できるようになります。ぜひ挑戦してみましょう。

細かく見てみると、ver1の1小節目ではC-ソミ、F-ドラ、2ではC-ソドミファ・・・・という風になっています。Cなのに、ファの音を使っているのは、その次の3小節目のソにうまくつなげるためです。5小節目は、C-ソミ、Am7-ドミ、7小節目小節目はレラファ#レ・・・という風にうまく、コードの音を使ってメロディーを組み立てているということがわかりますね?

ver2では、さらにほとんどコードの音のみを使って、新しいメロディーを組み立てていますので、よく味わいながら演奏し、分析し、ぜひ自分でもメロディーを考えて紙に書いてみましょう。最初は時間がかかると思いますが、だんだん早く考えられ書けるようになります。うまく書けたものをよく練習し記憶してそれを蓄積していくと、即興演奏の時に自分だけが使える素材となります。


フライミー・トゥー・ザ・ムーン(Fly me to the moon)









 2曲目は少し難しくなりますよ!練習の手順は、さっきと同じです。


@ドレミを歌う

A指をつけてドレミを歌う

B指と歌がよどみなくできるようになったら、楽器をもって練習し始める。アーティキュレイションは気にしなくてよい。

C最後にアーティキュレイションを気をつけて正確に吹けるようにする。

D何回も吹いて覚えたら、暗譜して見ないで演奏する。心の感じるままに、強弱、ビブラートなどをつけてよい。

「C」を見てください。この曲に使われるコードは、10種類です。


Am・・・ラドミ

Dm7・・・レファラド     
G7・・・ソシレファ    CM7・・・ドミソシ  
FM7・・・ファラドミ

Bm7♭5・・・シレファラ E7・・・ミソ#シレ
A7・・・・ラド#ミソ
E♭dim7・・・ミ♭ソ♭ラド  
  
Em7♭5・・・・ミソシ♭レ



#、♭の入ったコードは、とても歌うのは難しいのですが、まず#、♭の入らない状態で楽器で吹いてまた、その音を歌うようにして、それから必要な音を変化させて、その音をとらえるようにしてください。こうした努力をしているうちに、見違えるように音感がよくなっていくでしょう。

「D」はそれぞれのコードの構成音を、音域いっぱいに吹く練習です。かなり大変だと思いますが、指がすらすら動くまでしぶとく練習してみてください。これができる頃には、かなりテクニックが向上していますよ。

さてテーマが吹けるようになったら、バリエーション「A」は、必ずコードのルート(根音)から上に向かって吹いていくような形になっています。これでまず、コードネームと構成音の関係をとらえましょう。たとえばFM7・・・ファラドミ…という関係を頭にたたきこんでいきます。

バリエーション「B」は、今度は展開型といってそのコードの構成音は使っていますが、必ずしもルートから始まっていません。だけど吹いてみると、それぞれのコードの感じは出ていますので、コードの構成音というのは、どんな順番で吹いてもその感じは失われることはないのだということがよくわかってきます。とても自由な気分です。何だそういうことだったのか!コードの構成音をしっかり覚えると、自由なメロディーラインを創作することができる…ということになります。(何て素晴らしいことなんだ!)

今回の講座の内容は、ガクンとレベルが上っていて練習が大変かと思いますが、頑張ってやってみましょう。 この講座の内容についてさらに詳しく知りたい方は私の著書、”Play the Alto sax、Play the jazz sax”(中央アート出版社刊)をご覧下さい。


参考文献(いずれもCDブックです):play-a-long series vol.54 /Jamey Aebersold jazz inc/Jamey Aebersold 、Play the alto sax、Play the jazz sax/中央アート社刊/菊地康正著



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